ここ
「ここ」は灰野のレパートリーの中で最も人気の高い曲のひとつであり、何十年もの間ライヴで披露されてきた。ここに挙げたのは30分のヴァージョン。一時間の中の半分を一つの曲で占めることは理不尽に思えるかもしれないが、この曲にはそれだけの価値がある。2002年から2004年に騒音問題で閉店するまで、東京の西早稲田にジェリージェフという小さなライヴハウスがあった。そこで灰野は基本的にギターとヴォーカルによるライヴを10回近く行った。連続した数曲の長尺ナンバーで構成され、全部で2時間以上に及んだ。ジェリージェフでの灰野のパフォーマンスには際立った特徴があった。この会場は灰野の瞑想的でメロディックな精神状態を誘発したように思える。この「ここ」のヴァージョンは、ジェリージェフでのパフォーマンスを完璧に捉えている。公式なデータのクレジットはないが、聴く限りでは、これは2003年9月21日ジェリージェフの灰野のソロ・ライヴのラスト・ナンバーだと思われる。それはともかく、このトラックは楽曲の「ここ」が始まる前に灰野の天使のようなヴォーカルと浮遊し煌めくギターが17分間続き、メインのメロディが終わった後に、前半部と同様の構造の7分間のエンディングで終了する。 この曲をより理解いただく為に歌詞を掲載する。アルバム『息をしているまま』(Tokuma Japan Communications, TKCF 77016, 1997)に収録された18分32秒のヴァージョンである。 今は去りゆくもの 一度だけ 何もかも分かったつもりになった奴 光なんかに憧れを抱いた愚かな奴が またここに戻ってきてしまうのに 夢なんて 闇の中に捧げてしまうことだけが 成就できる たったひとつのやり方なのさ 溢れ 紅く紅く流れ出たもの いつかは本当の黄金に変わる 翼あるから もう一度なんて言いたがる 頭あるから 考える 手なんてあるから 愛したがる 何もないなんていうことさえ 偽りなのさ あらゆることを「在る」っていうことだけは 許されるのさ ここに居る ここの前には 何処に居たの ここよりもっと素敵なところ あの導き 貴方だったの

